フランス映画「愛する人に伝える言葉」

あらすじ

フランスを代表する名女優カトリーヌ・ドヌーヴと、本作でフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞最優秀男優賞を受賞した演技派、ブノワ・マジメルの共演による物語。
癌を宣告された主人公とその母親が、衝撃や悲しみを克服しながら、限られた時間のなかで人生を見つめ直し、「人生のデスクの整理」をしながら、穏やかに死と対峙できるようになる過程を感動的に描く。
公式HP
人生半ばにして膵臓ガンを患ったバンジャマンは、母クリスタルとともに、名医として知られるドクター・エデのもとを訪れる。ステージ4の膵臓ガンは治せないと告げられ自暴自棄になるバンジャマンに対し、エデは病状を緩和する化学療法を提案。エデの助けを借りながら、クリスタルはできる限り気丈に息子の最期を見守ることを決意するが……。

作品情報

製作年:2021年
製作国:フランス
原題:De son vivant

キャスト・監督

監督:エマニュエル・ベルコ

出演:ブノワ・マジメル、カトリーヌ・ドヌーヴ、セシル・ド・フランス


評価 :5/5。

感想

患者の死に日々向き合う医者や看護師もまた、心の整理が必要だということをまず映画の冒頭で知りました。医者や看護師が脇役でなく、患者と一緒に死と向き合う同志であると描かれていることも、この映画がより一層の深みを持つ点です。

主人公のバンジャマンは若い役者を教える元俳優で39歳。がん治療の第一人者である医者にさえも、ステージ4の癌は治せないと言われ、自分の母にはどうやら化学治療を進められているようだが、自分自身は治療に前向きではない、そんな男性です。

カトリーヌ・ドヌーヴは癌で余命宣告をされた主人公の母役。主役ではなけれど、存在感を感じさせます。

私自身が息子を持つようになって、こういった映画の「母」役に、とてもとても感情移入してしまうようになりました。家族を持つ人は、自分が自分であるという立場以上に、母、であるとか、父、であるとか、子ども、であるとか、いろいろな立場を「背負う」ので、それぞれの立場として感じることが多いでしょう。

がんの家族を看取ったことのある方がこの映画を見れば、きっと余命宣告の序盤のシーンから、胸が痛くなってしまうことと思います。

けれど医者の言葉は、そんな癌患者の家族にも、がんのことをあまり知らない者にも、哲学的に心に響くことと思います。

この映画が哲学的であるもう一つの一面が、主人公が教える生徒たちが役者の卵で、芝居の稽古をする場面です。「愛」「別れ」、人生で何度か出くわすその場面には、どういったリアルがあるのか。言葉にすれば説教くさくなるであろうこういった深妙なトピックも、演じる、感情の吐き出しを学ぶ若者の視点を借り、鑑賞者にまっすぐ伝わる。

「患者が死ぬ前に、死よりも怖いのは、自分が死にゆく今も家族と絶縁していることのようだ」と、映画の中で看護師は言います。

「人生の整理」が、どうやら映画全体のテーマになっているようです。


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