もくじ
あらすじ
世界的ベストセラー3部作、完結編の翻訳のために、各国から翻訳家が集められた。
彼ら9人は2カ月間、地下のシェルターに隔離され、翻訳作業に取り掛かる。
シェルターではインターネットなど、外部との連絡を取ることは禁止されている。小説の流出を防ぐために、出版社のオーナーであるアングストロームが考案した方法だ。まるで翻訳家を家畜のように扱っていると批判する人もいる。
作業が進められてゆく中、ある一通のメールがアングストロームの元へ届く。
機密であるはずの小説の内容がどこかから流出し、24時間以内に大金を支払わなければ、インターネットで世界中に公表するという脅しのメールだった。
原稿にアクセスできるのは、顔も所在も未公表のこの小説の著者、「オスカル・ブラック」本人と、そしてアングストローム。
そして毎日、翻訳作業のため20ページずつ内容を知ることができる、9人の翻訳家の中に犯人がいるはずと見込んだアングストロームは、彼らを問い詰める。
そして次第に、互いに疑いの目を向け始める9人の翻訳家たち。
この隔離されたシェルターから、一体誰が、どのようにして出版前の小説を流出させたのか?そして、その驚くべき理由とは・・・
作品情報
公開年: | 2020年 |
---|---|
製作国: | フランス・ベルギー |
原題: | Les traducteurs |
キャスト・監督
監督:レジス・ロワンサル
出演:ランベール・ウィルソン、オルガ・キュリレンコ、アレックス・ロウザー
感想
鑑賞前、タイトルから、フランソワ・オゾンの「8人の女たち」を想像した。
9人がある豪邸に隔離された状態で、その中の誰かが犯行を犯し、互いが互いを疑う・・・という展開も、「8人の女たち」のようだなと思いながら、見始めた。
見終わった感想としては、「9人の翻訳家」も「8人の女たち」も、私はどちらも好きだ。
しかし、今回鑑賞した「9人の翻訳家」は、サスペンス映画の中で区分けするならば、見ている間だけ楽しんで、見終わった後は現実の世界に戻れるタイプのエンターテイメントではなかった。
そもそも監督も違い制作された時代も違うので比べる対象ではないかもしれないが、「8人の女たち」は、ドキドキハラハラのサスペンス映画だが、見終わった後、見ている最中も、エンターテイメントとして割り切れるタイプの映画だった。
さて、「9人の翻訳家」は、映画の前半は、ザ・サスペンスを感じさせる、冷たい雰囲気で物語が進行してゆく。シェルターという設定、出版社の冷徹で金にしか興味がない社長。
9人の翻訳家たちも、それぞれクセがありそうだ。
翻訳は豪邸の中で行われる。2カ月間、この豪邸の外には出られない。
隔離された状態で、毎日のように顔を合わせ、時には酒を飲み交わす中で、9人は次第に打ち解けてゆく。そんな段階で、事件は起こるのだ。
最大の機密事項である、未出版の小説の流出。
当然、この9人の翻訳家が疑われる。
実は、この映画は時系列が、2ヶ月後、過去、翻訳作業中、と行ったり来たりしながら描かれるので、前半はついてゆくのに集中力が必要だ。
犯人が誰なのか?誰が怪しいのか?を見極めながら、鑑賞する。
犯人は、映画の中盤あたりでスルッと明かされる。なので映画の後半については、この人物が、なぜ、どのようにして小説の内容を流出させたのか?を知りたくて、見続ける事になる。
この映画の優れた点は、9人の翻訳家はもちろん、小説の著者とされている謎の人物「オスカル・ブラック」それぞれに魅力を感じさせる点だ。
バックボーンが、さすがに全員分しっかりと描かれているというわけではないが、主要人物については、その人間性をしっかり鑑賞者が汲み取れるところまで、描いているので、感情移入できる。
サスペンスは、「誰が犯人か?」または「なぜ?」ということに終始して、まぁまぁ楽しめるが内容が薄っぺらくなりがちな映画も中にはある。
しかしこちらの「9人の翻訳家」については、登場人物に魅力があり、そのセリフに共感できるものを感じるので、心が揺さぶられる。
とにかく、心をぎゅっとつかまれるような映画であった。
2回目は、犯人など全て知った状態で、鑑賞するが、それでも楽しめる。
豪邸への隔離、インターネットを利用した現代的な犯行スタイル、など、サスペンス要素盛りだくさんではあるが、最後は人間の愛というところで心を揺さぶり、胸に残る作品。
この映画について、もっと知りたい方は、公式サイトをご覧ください。→
公式サイト
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