フランスの女優。ヌーヴェルヴァーグから現代まで。その魅力を堪能できるお薦め映画を紹介

フランス映画界を彩ってきた女優たち。略歴や、その魅力を堪能するのにおすすめな映画作品。フランスの有名な女優の中から、フランス映画初心者でも名前を聞いたことのある、10名をまとめて紹介します。


マリオン・コティヤール

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Marion Cotillard

マリオン コティヤール

1975年生まれ。

1993年、16歳の時に映画デビュー。

愛くるしい、少し憂いを含んだような笑顔が魅力的。

両親ともに俳優で、幼い頃から舞台にたち、オルレアンの演劇学校を首席で卒業。

ハリウッドの映画にも出演しているので、日本人にとっては映画で目にする機会の多い女優だ。

(ティムバートン監督「ビッグ・フィッシュ」など)

デビューして数年のマリオン・コティヤールを堪能するなら、

映画「Taxi」シリーズ

がおすすめ。主人公の婚約者として、キュートな役どろこで出演している。

アクション系の映画が苦手な方は、ぜひTaxi2だけでも観て欲しい。日本のヤクザが登場、他にも日本のモチーフや、日本語をフランス人が話すシーンなど、日本人がクスリと笑ってしまう場面が前半に多い。

2007年の

「エディットピアフ 愛の讃歌」

ではエディット役を演じ、アカデミー賞女優賞、ゴールデングローブ賞を受賞した。

2009年のミュージカル映画

「NINE」

では、主人公の控えめな妻役。だが、この映画の終盤では、夫の浮気への怒りを込めたダンス&歌のシーンがあり、ストリップのような演出で新たな一面を垣間見れる。

私生活では、「世界でいちばん不運で幸せな私」で知り合ったギョーム・カネと交際、2011年に男児を出産している。

「リトルプリンス 星の王子さまと私」「ミニオンズ」では声の出演も。

出演作品

「Taxi2」「銀幕のメモワール」「世界でいちばん不運で幸せな私」「ビッグ・フィッシュ」「エディットピアフ 愛の讃歌」「NINE」など多数。


オドレイ・トトゥ

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Audrey Tautou

(オドレイ・トトゥ)

1976年生まれ。

顔を見れば、フランス映画に詳しくない方も「アメリ」ちゃんだとすぐにわかるほど、フランス映画「アメリ」は日本でもヒットした。

オドレイ・トトゥの父親は歯医者、母親は教師であったが、子どもの頃から演技クラスをとるなど、演技に興味を持つ。

1996年にフランスのテレビ映画、シリーズのエピソードなど小さな役で出演をスタート。

2001年の映画

「アメリ」

で世界的に有名に。

2006年の「ダ・ヴィンチ・コード」でハリウッドデビュー。こちらは世界的に大ヒットした小説の映画化で、作品自体が注目されていたので、映画館で観た方も多いのではないだろうか。

オドレイ・トトゥといえばどうしても「アメリ」の不思議ちゃんのイメージ。他の映画に出演しても、不思議ちゃんの先入観で観てしまうのが正直なところ。

オドレイ・トトゥの他の役どころも観てみたい方には、

「幸せになるための恋のレシピ」がお薦め。

2007年のフランス映画で、個人的なお薦めポイントとしては、

  • 作品自体が重くない、ハッピーで大衆に受け入れられやすい
  • 主役以外にも魅力を感じる(主演女優に頼りきりでない)
  • ギョーム・カネが出演している

2015年の

「グッバイ、サマー」

では母親役を演じている。

フランス映画「グッバイ、サマー」は、少年2人が夏休みに旅に出るお話で、「スタンドバイミー」や「マイフレンドフォーエバー」のような雰囲気の作品。

オドレイ・トトゥが演じるのは少年の母親役だが、不思議ちゃんは卒業しても、どことなく独特な雰囲気。

彼女のファンタジックかつサイケデリックな持ち味は、アメリ効果もあるが、やはりオドレイ・トトゥの持つ素質の一つのようだ。

代表作

「アメリ」「ダヴィンチコード」「ココ・アヴァン・シャネル」


カトリーヌ・ドヌーヴ

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Catherine Deneuve

カトリーヌ・ドヌーヴ

1943年生まれ。

日本では認知度ナンバー1のフランス 女優だろう。

カトリーヌ・ドヌーヴ といえば、1960年代、ヌーヴェルヴァーグ、つまりは
“昔の”スター女優、というイメージを持つ方も多いかも知れないが、最近の作品では母親役も多く、その演技力と存在感は健在。

そして、カトリーヌ・ドヌーヴ 活動歴の長さにも注目したい。(昔の売れっ子の中には、実際に映画に出る期間は短く、セミリタイアしている女優も結構いる。)

一つのことをひたすらに続けるというのは、演じることに対して相当な情熱がないと、できないことだろう。


10代のころ(1957年頃〜)から映画に出始める。

ミュージカル映画『シェルブールの雨傘』のヒットで世界的スターの座をつかむ。

代表作

1964年「シェルブールの雨傘」で注目を浴びる。 

1960年〜70年代「ロシュフォールの恋人たち」「めざめ」「ロバと王女」 「モン・パリ 」

1980〜90年代「終電車」「インドシナ」

2000年以降〜「8人の女たち」 「ルージュの手紙」

その美貌で注目された事はもちろんだが、美しいだけでなく、エキセントリックな役も引き受けて演じきっているドヌーヴ。悪徳のヒロインも、あっさりとこなす。

↓カトリーヌ・ドヌーヴ については、こちらに詳しくまとめています!


カトリーヌ・フロ

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Catherine Frot

カトリーヌ・フロ

1956年生まれ。

カトリーヌ・ドヌーヴ は知っているが、カトリーヌ・フロは知らない、という方は、まず彼女の主演作を一本観て欲しい。

きっと、この親しみやすい雰囲気に魅了されるはずだろう。

1980年映画デビュー。

1998年に、フランス人に大大大人気のコメディ映画

「奇人たちの晩餐会」

に出演。

もちろんフランスではしっかりとキャリアを積んでいるが、日本での知名度が上がったのは、40代〜50代で主役をやるようになってからだろうと思う。

主演までの年数を考えると、例えばドヌーヴ のような、デビューしてすぐにスターになるケースではなく、大器晩成型で女優なのかも知れない。

2006年フランス映画

「地上5センチの恋心」

で演じる、ひょうひょうとした、作家にハマってしまい恋心を抱く母親役もチャーミング。

「偉大なるマルグリット」

では、自分が音痴なことを知らずに人前でコンサートを開くマダム役で笑わせてくれ、泣かせてくれる。

「ルージュの手紙」

ではカトリーヌ・ドヌーヴ と共演しているが、こちらは少し真面目な役柄で、シリアスなシーンも多い映画。

個人的には先に紹介した2本の映画
「地上5センチの恋心」そして「偉大なるマルグリット」を、お薦めしたい。

おちゃらけの入った(?)カトリーヌ・フロのキャラクターと、奇想天外なストーリーが面白く、心に残る。

出演作品

「奇人たちの晩餐会」「大統領の料理人」「地上5センチの恋心」「偉大なるマルグリット」「ルージュの手紙」など多数


エマニュエル・べアール

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1963年生まれ。

1976年映画デビュー。

父は歌手、母はモデルという事で、女優としては恵まれた生い立ちであろう。10代で映画デビューしている。

私の場合には、2002年の

「8人の女たち」

の、ミステリアスでセクシーなメイド役で、エマニュエル・べアールの名を知った。

そして、1986年のフランス映画

「愛と宿命の泉」

のマノン役の女優さんか、と結びついた。

この「愛と宿命の泉」はクラシックな映画。一部、二部と分かれている、長編である。

「泉のマノン」

は、この二部である後編。

長編なので、フランス映画初心者には、観るのに根気がいる作品であると私は思うが、何もすることがない天気の悪い連休などに部屋を暗くしてどっぷりと映画の世界に浸るのにはお薦め。

さて、エマニュエル・べアールは、この「愛と宿命の泉」の中でも、

“水浴びをしている美しい娘” であったり、「8人の女たち」でも、

“旦那様と不倫をするセクシーなメイド” であったりと、きっとフランスの女優の中ではセクシー担当なのだろうと予想しているが、どうなのだろうか。

こちらは観たことがないが、1991年の『美しき諍い女』では、4時間以上に渡る上映時間のほとんどをヌードで演じて話題になったそうだ。

1996年には、ハリウッド映画

「ミッション・イン・ポッシブル」

にも出演。1996年から10年間、ユニセフのフランス代表親善大使であった。

出演作品

「愛と宿命の泉(泉のマノン)」「ミッション・インポッシブル」「8人の女たち」など


イザベル・アジャーニ

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1955年生まれ。14歳のときにスカウトされ女優の道に。

1970年映画デビュー。

フランス国立の劇団である、コメディフランセーズに所属し舞台に出演していたこともある。

1975年

「アデルの恋の物語」に19歳で出演。その演技力に高い評価を得た。

「アデルの恋の物語」は狂気的な恋の情念を描いた物語。そして、1988年の

「カミーユ・クローデル」

はロダンの助手であり愛人のカミーユがロダンへの愛のあまりに狂って精神を病んでゆくという話。

狂人を演じるというのはパワーのいる事であるし、また普段ほとんどの人が理性で押し込めている人間の狂った一面を、代わりに体現してくれているという、そういったところに潜在的に心を射抜かれてしまうのかもしれない。

またイザベル・アジャーニの吸い込まれるような瞳も、人々が魅了される点であろう。

1994年出演の

「王妃マルゴ」

は、アレクサンドル・デュマの小説の映画化作品。

豪華キャストを揃えた歴史超大作。イザベル・アジャーニは、王女でありながら、男漁りに街に繰り出すような奔放な女性を演じている。

作品としてのエンターテイメント性の点ではお薦めしないが、フランスの歴史を学べるという点では観る価値がある。

それよりも、2003年の

「ボン・ヴォヤージュ 運命の36時間 」

をお薦めしたい。まず、アジャーニ以外の俳優陣も見ごたえのあるメンバーで、何よりストーリーが始終ハラハラドキドキ、飽きさせない。

この作品では、イザベル・アジャーニは
“地位と名声を手に入れた女優” を演じている。女の美しさと涙を武器にし、悪気なく男を翻弄する、小悪魔的な役どころ。

おそらく、作品の中では ポジション的には”憎まれ役” であるのだろうが、身につけている洋服や立ち回りがなんとも素敵だし、何よりあの吸い込まれそうな瞳の美しさが画面から溢れ出そう。

代表作

「アデルの恋の物語」「カミーユ・クローデル」「ボン・ヴォヤージュ」など


イザベル・ユペール

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Isabelle Huppert

イザベル・ユペール

1953年生まれ。

演劇学校などで学んだ後、舞台やテレビを経て1972年に映画デビュー。

これまで、セザール賞に14回ノミネートされ、史上最多記録である。

イザベル・ユペールの素敵な雰囲気味わうのなら、

「間奏曲はパリで」

をお薦めしたい。

この映画の主人公の主婦ブリジットのチャーミングさは、もちろんそういう役の設定のためもあると思うのだが、イザベル・ユペールという女優の魅力が滲み出ているのではないかと思う。

“普通にいそうな、すごく雰囲気の良い人。だけどオリジナルな魅力があって大好きになってしまう” そんな魅力的な役どころ。

映画は、熟年の夫婦の関係、妻の冒険心(不倫)を描いた内容。

いくつかのフランス映画で、不倫が描かれている作品を観たが、なぜかドロドロせず、さらっと、ちょっとした冒険なので結果オーライのような描かれ方が多いように思う。

日本の場合には、不倫を描くのであれば、それは後ろめたさや秘めやかさなど、何となく薄暗い内容になりがちだ(と思う)が、フランス映画で描かれる不倫は、何となくその人の人生にプラスになっている前向きな印象を受ける。(気のせいか?)

イザベル・ユペールの他の作品では、

「8人の女たち」

は初心者向きで観やすい。カトリーヌ・ドヌーヴの妹で、神経質な女性を演じている。女優なのでプロとして当たり前なのかもしれないが、作品ごとに全く違った 印象を受ける女優さんだ。

出演作品

「アロイーズ」「レースを編む女」「ヴィオレット・ノジエール」「主婦マリーがしたこと」「8人の女たち」「間奏曲はパリで」「エル」など


ジュリエット・ビノシュ

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Juliette Binoche

ジュリエット・ビノシュ

1964年生まれ。

父は俳優で演出家、母は女優。

1983年公開の『Liberty Bell』にて映画初出演。

ハリウッド映画に出演したフランス 女優は、当然日本での認知度も高い。

ジュリエット・ビノシュは、2000年に

「ショコラ」

でジョニー・デップと共演し、アカデミー主演女優賞にノミネートされた。

世界三大映画賞を全て受賞した女優でもある。

出演作品

「ポンヌフの恋人」「イングリッシュ・ペイシェント」「年下の人」「ショコラ」「隠された記憶」「ゴジラGodzilla」「真実」など


ジャンヌ・モロー

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Jeanne Moreau

ジャンヌ・モロー

1928年生まれ。(2017年没)

ジャンヌ・モローの母親はキャバレーのダンサーで、ジャンヌは母の影響を受けて育つ。パリのコンセルバトワール(国立演劇学校)を卒業。

コメディフランセーズ(国立の劇団)舞台に出て、頭角を表す。

フランス映画好きの、少しご年配の方とお話しすると、必ずジャンヌ・モローの名前が出てくる。ヌーベルヴァーグの監督たちの作品で、世界的に注目を浴びる。

カンヌ国際映画祭では主演女優賞を受賞、また映画界への多大な貢献により、フランス内外から名誉賞等を授与される。

活動期間 1947年〜2012年

2017年に、パリの自宅で89歳で亡くなる。

「バルテルミーの大虐殺」「死刑台のエレベーター」「ニキータ」「レ・ミゼラブル」「クロワッサンで朝食を」など65作品以上


ブリジット・バルドー

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Brigitte Bardot

ブリジット・バルドー

1934年生まれ。

女優・歌手・モデル・動物保護活動家。

1949年、Elleのフッションモデルを15歳で務める。

18歳で映画監督のヴァデムと結婚し、その監督作品「素直な悪女」に1956年に出演。小悪魔的な役回りで有名になる。

共演者の俳優と恋に落ち、のちに監督とは離婚。その後も、結婚、離婚、不倫など「自由気まま」な男性遍歴である。

1967年には、セルジュ・ケンズブール

「ジュテーム・モア・ノンプリュ」

などを歌う。

1973年の映画を最後に引退宣言をして動物愛護活動に専念する。

出演作品

「パリは気まぐれ」「ドン・ファン」など。

ブリジット・バルドー他、フランスの有名人については、こちらの記事でも書いています。

これから注目したい若手?女優たち!


リュディヴィーヌ・サニエ

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1979年7月3日、フランス生まれ。

なんと10歳で映画デビュー!天才子役だったのですね。

フランスが誇る異才フランソワ・オゾン監督の作品で高く評価される。

2002年の「8人の女たち」では、カトリーヌ・ドヌーヴらベテラン女優と共演し、セザール賞の有望若手女優賞にノミネートされた。

出演作品

『8人の女たち』(02)
『スイミング・プール』(03)


フランスの女優紹介、いかがでしたか?

好きな女優さんを見つけて、その女優の映画を隅から隅まで観てみるのも、楽しいかもしれません!