英語を習っていると、フランス語も頭に入りやすい?
フランス語を学習していると、英語に似ている単語がたくさんあることに気付きます。なぜフランス語と英語は似ているのでしょうか?
フランス語が英語に影響した歴史的できごととは?
そもそもフランス語という言語はどこから来て、どう進化したのか?
語学を学ぶ時に、語学の歴史を知っていると、学習意欲も高まりますよね。
普段よく使っているあの言葉は、実はフランス語だった?和製?フランス語の紹介など・・・フランス語や英語の歴史を知った後には、フランス語に似ている英語の単語集も載せています。ぜひ最後まで、ご覧ください。
もくじ
フランス語は英語の次に習う人が多い
フランス語は、世界で、英語の次に多くの国・地域で使用されています。フランス語を学ぶ人も、英語に次いで世界で2番目に多いです。
フランス本国はもちろん、ヨーロッパではスイス、ベルギーで、またカナダでも、そしてかつてフランスやベルギーの領地だった諸国など29か国で公用語になっています。
また、国際連合などの世界的な国際機関の公用語となっています。オリンピックをTVで見ていると、たびたびフランス語でのアナウンスが入ることに気づきます。
フランス語、イタリア語、スペイン語などは、全てラテン語が基になっています。
一方、英語はゲルマン語派の言語(ドイツ語・オランダ語・スウェーデン語などと同じ)ですが、実は語彙の6割ちかくはフランス語もしくはラテン語からきた言葉です。
フランス語が英語に影響した歴史的できごと
英語はフランス語と歴史上深い関係があります。フランス語は、英国の宮廷貴族の間で使われていました。なぜ英国の王室で、フランス語が使われるようになったのでしょうか?
ウィリアム一世の英国侵略
Guillaume le Conquérant
1066年、フランスのノルマンディーの君主ギョーム2世が、イングランドを侵略し、その年のクリスマスにイングランド王ウィリアム1世として戴冠しました。
この歴史的出来事は、ノルマンコンクエストと呼ばれています。
ウィリアム1世の宮廷では、ノルマンディーなまりのフランス語が使用され、時代とともに現地の言葉と融合し、英語が形成されていったのです。
フランス語は上流階級の言葉として、使われるようになりました。この状況が300年近く続いたようですが、14世紀に再び英語が公式の言語になってゆきます。
イギリスがフランスとの百年戦争(1339~1453)に突入すると、敵国の言語であったフランス語は国民感情の悪化から、公用語としての地位を失い始めるのです。
こうして英国では独自の言語発展を遂げてゆきます。
ノルマンコンクエストの英国王室への影響
先ほど紹介したノルマンコンクエストで有名なウィリアム1世は、ギョーム征服王と呼ばれ、現在のイギリス王室の開祖です。
王室ではウィリアム1世のイングランド征服の後、イングランドが外国軍によって征服されることはなく、後の王家は全てウィリアム1世の血統を受け継いでいます。
ウィリアム一世は、イングランド全域の5分の1を王領とするなど、王権を拡大させました。
彼の王権の強さが、イングランドで後に絶対王政が早く確立した原因の一つと言われています。
王の名前は、その人生や個性に因んで、懺悔王、赤顔王、などのニックネームがつけらています。
なぜ英国は征服された?
後にイングランド王になるギョームは、フランスの北西部、ノルマンディー地方の君主の庶子として生まれました。
そして当時のイングランドはというと、デーン人の支配を受けている時代。
ウェセックス王家のエドワード懺悔王がイングランド王に即位しましたが、その地位は危ういもので、エドワード懺悔王の跡を周辺国の王や諸侯達が狙っていました。
懺悔王エドワードとノルマンディー公ギョーム2世は親戚であり、またデーン人の支配を逃れるため、20年余りノルマンディーにて亡命生活を送っていたため、ギヨームとは親しい関係にありました。
そのような事もあり、後継のいない懺悔王エドワードはノルマンディー公ギョームに王位継承の約束をしたのです。
しかしこの約束があったにも関わらず、エドワード懺悔王の死後、彼の義理の兄ハロルドがイングランド王に即位しました。
怒ったギョームはイングランドに攻め込みます。そしてハロルドとの戦いに勝利し、イングランド王となりました。
2020年10月の「フランス文化クラス」では、ウィリアム一世とノルマンディーの歴史がテーマでした!
フランスの歴史に興味のある方は、ぜひ!
フランス語の歴史
フランス語はどこから来たのでしょうか?フランス語の進化の歴史とは。
地域による様々な言語があった時代
紀元前は、今のフランスのある地域では複数の言語が話されていました。
- ユリウス・カエサルによる征服
- フランク族による侵略と彼らの定住
などにより、言語は影響を受け変化してゆきます。
ゲルマン人の言語から新しい言葉が持ち込まれたり、発音や文法を変化させたりしながら、だんだんと進化してゆきます。
民族同士の関わりや、侵略の歴史を重ね、それぞれの地域の言葉が混ざってゆくのは興味深いですね。
842年
現存するフランス語最古の文章「ストラスブールの誓約」が書かれる(西フランク王国と東フランス王国の同盟)
1204年
ノルマンディーがフランス王国領となり、海や航海に関係する語で約150の語がノルマン語よりフランス語に取り入れられる。
1539年
フランソワ1世がフランス語を行政と宮廷で用いる公用語とし、ラテン語を追放。
1634年
リシュリュー枢機卿によってアカデミーフランセーズが創設される。
(アカデミーフランセーズはフランス語の純化と維持を目的とする公的機関)
17世紀から19世紀
大国であるフランスの言語は近隣の国の知識階級の共通語になるなど、大きな影響を与えていました。
ロシアやスカンジナビア諸国の宮廷でも重要な言語とされ、自民族の言語は農民の言語とみなされていたほどです。
しかし、1789年(フランス革命の頃)は、フランス語をしっかり話せたのは12~13%のフランス人であり、フランス人の50%は話せませんでした。
ナポレオン徴兵が言語統一に貢献
ナポレオンによって導入された徴兵制度は、共通の言語を持つ集団としての「フランス国民」であるという意識を高めました。フランス語の統合の役目も果たしたと言われています。
反面、地域の方言や少数言語が減ってゆくきっかけにもなったのでした。
アメリカ大陸へ〜現在
アメリカ大陸への入植により北米カナダにもフランス語が持ち込まれます。
イギリスもまた、世界中に多くの植民地を持ち、英語の話者数も増加してゆきます。
第一次世界大戦の条約であるヴェルサイユ条約は、フランス語と英語の両方で書かれています。
第二次世界大戦後には、アメリカ合衆国が大国となったことにより、フランス語の国際言語の地位は英語に代わりました。
アカデミー・フランセーズの創設や公教育の普及、政府による管理、メディアの発達によって、公用語としてのフランス語は統一されてゆきますが、アクセントや語彙における地域ごとの特徴や差は今もなお存在します。
英語ができるとフランス語もできる?
ずばり一理あると感じます。その理由は以下にあります。
英語とフランス語は似ている
例えば日本語とフランス語では、使う文字の時点で大きな違いがあります。アルファベットで書かれた全く知らないフランス語の単語を見て、意味が予測できることはありません。
しかし、フランス語と英語は、スペルは微妙に違うけれど、なんとなく似ている言葉が多くあります。そのため、英語の話者が初めて目にしたフランス語の単語でも、意味がわかってしまう時が多々あります。
同じ理由で、フランス語話者にとっても、英語の単語は、少なくとも日本語よりも覚えやすいものでしょう。
語順も、英語とフランス語は似ているので、置き換えで覚えてゆくことができます。
語学の効率的な勉強方法がわかっている
これは、英語とフランス語においてのみでなく、全ての言語に言えることだと思います。一度、母語以外のなんらかの言語を習得した人は、複数の言語を習得する術を知っているのです。
術というのは、つまり勉強法のことですが、自分なりのメソッドを持っているので、置き換えてゆくことにより、言語習得がスムーズになります。
会話のコツを知っている
フランス語や英語で会話をしている時、例えば相手に伝えたい言葉があるけれども、その単語を知らない時、どうしますか?
もし会話初心者であれば、言いたいことが言えなくて、話すのをやめてしまうでしょう。
しかし、例えば「疲れています」と言いたい時、「疲れる」という言葉自体を知らなかったら、「元気ではありません」など、他の言い方で伝えることもできますよね。
初心者の時は、日本語で頭で考えた通りの訳文をフランス語で言おうとしがちですが、ある程度、母国語以外の言語での会話に慣れている人は、この置き換えや言い換えがスムーズにできるものです。
すると、知らない言葉が頭の中で浮かんだ時もそこで思考が止まらず、抜け道で回避することができます。
とにかく「どうにかして伝えたい」そして「伝わる」という思いを強く持つことの連続が、会話上達につながってゆきますよね。
世界のフランス語
フランス語は17世紀から19世紀まで、ヨーロッパでもっとも有力な言語でした。外交官にも使われてきたため、国際機関では公用語となっていることが多いです。19世紀〜20世紀前半においては、国際共通語の地位を持っていたので、この時期に創設された国際機関では、第一言語とされている事が多いとのことです。
例えば
FIFAワールドカップ
を開催している国際サッカー連盟は、正式名称がフランス語で
FIFA: Fédération Internationale de Football Association
と言います。
フランス語・英語の似ている【単語集】
さて、実際に英語とフランス語で似ている単語には、どのような言葉があるのでしょうか?よく耳にする言葉で、英語と似ているフランス語を紹介します。
フランス語由来の英語
croissant
クロワッサン
フランスと言えば、クロワッサン!
フランス旅行で、オープンテラスでカフェと一緒にいただくクロワッサンは絶品です。
英語でも、
croissant クロワッサン
で、スペルも同じです。
crème brûlée
クリーム・ブリュレ
日本では、フランス映画「アメリ」で有名になったクリームブリュレです。フランスのデザートの定番で、フランスのレストランではデザートメニューに必ずと言っていいほどあります。
英語では、スペルが少し違い
cream brulee
となります。
フランス語と英語との大きな違いでもあるRの発音は、フランス語では、喉の奥を鳴らすように発音します。
英語では、舌を巻くように発音しますよね。
クリームブリュレのスペルの中には、Rが2回も出てくるので、発音の違いを比べてみると面白いかもしれません。
restaurant
レストラン
レストランは、そのまま日本でも使う単語ですね。クリームブリュレと同じく、Rの発音によって、言葉の聞こえ方は違います。
à la mode
ア・ラ・モード
アラモードという言葉を聞いて、何を想像するでしょうか?
アメリカでは
「アイスクリームをのせた」という意味で、デザートの名前としてよく使われている言葉ですが、フランス語の意味としては、
「流行の」「ファッショナブル」
という意味です。
このズボンは流行っている。
Ce pantalon est à la mode.
ス パンタロン エ アラモード
のように使われます。
déjà vu
デジャヴ
「なんだか見覚えのある景色」「この光景、夢で見た気がする」
そんな時に、デジャヴ〜だ!と言いますよね。デジャブは、「既視感」という意味です。初めて経験したことなのに、既に経験した事のように感じられる錯覚の事です。
フランス語では、
déjà(デジャ)
もう、既に
vu (ヴ)
見る,会うという意味の動詞voir(ヴォワール)の過去形「見た」と言いたいう時に使われる形
なので、フランス語の意味はそのまま「既に見た」です。
英語で表現するとalready seenですが、英語の辞書にもdéjà vuがそのまま載っています。
フランス語に似ているが微妙に違う英語
英語とフランス語に深い関わりがあることを示すように、同じ意味の単語で、発音やスペルが似ているものがたくさんあります。
「色」という意味の名詞
couleur | color |
クレーる | カラー |
(左がフランス語、右が英語。以降同じ)
「花」という意味の名詞
fleur | flower |
フるーる | フラワー |
「変える」という意味の動詞
changer | change |
シャンジェ | チェンジ |
ダンス(名詞)
danse | dance |
ダンス | ダンス |
青(色の名前)
bleu | blue |
ブル | ブルー |
最後2つ、「ダンス」と「ブルー」に関しては、スペルが微妙に違いますね。音はほとんど同じです。
英単語の中にはフランス語が語源になっているものが多くあるためです。
和製?フランス語
日本で定着している、あの言葉も?実はフランス語でした。
ファッション用語はフランス語が多い!
pantalon
パンタロン(ズボン)
主に女性用のズボンのことを、パンタロンと最近言いますね。ズボンという響きよりもおしゃれに聞こえるでしょうか。
16世紀のイタリアの道化師パンタローネが履いていたズボンが名称の発祥だそうで、本来は裾の広がったズボンのことです。
英語ではトラウザーズ(trousers)です。
cardigan
カーデガン
ニットの、前あきのトップスのことですね。19世紀英国のカーディガン伯7世が愛用した短い軍服ジャケットにちなんだ名前だそうです。
blouson
ブルゾン
背中にふくらみをもたせたジャンパー風の上着です。
manteau
フランス語の読み方:マントウ
読み方は「マントウ」で、スーパーマンのマントを想像しますが、フランス語ではコートのことです。
jean
フランス語の読み方:ジーン
デニムのジーンズの事ですが、フランス語では「ジーン」と読みます。
culotte
キュロット
キュロットは、「キュロットスカート」として、女の子がよく履いている裾が少し広がったスカートのように見える短いズボンのことを言いますよね。
フランス語では子ども用の下着のパンツの事も言います。
salopette
サロペット
上下がつながったデザインのズボン、つまりオーバーオールのことです。厳密に言うと、オーバーオールとサロペットは違うそうですが、現在ではほぼ同義語として使われています。
pyjama
フランス語の読み方:ピジャマ
寝間着のパジャマのことです。
英国では、pyjama
米国では pajamas
となります。ヒンディー語が語源のようです。
casquette
カスケット
ハンチング帽で、日本では「キャスケット」と呼ばれます。
身近なフランス語
アンニュイ
「曖昧な」「ふんわりとした」のような意味あいで日本語の会話で使われていますが、フランス語では、
ennuyeux
オンニュイユ
退屈な、面倒な、という意味です。
ルージュ
最近では口紅という意味合いで「ルージュをひく」などとあまり言いませんでしょうか。フランス語の
rouge
るージュ
は、色の「赤、赤い」という意味です。
ランデブー
rendez-vous
フランス語の読み方:らンデヴー
ブとヴの違いは日本人でもわかりますが、Rを伴う、「ら」の音は発音するのも聞き分けるのも少し難しいです。(このページでは、Rの音をひらがなで表記)
フランス語の発音ではRの音を喉の奥を震わせるように出すので、フランス人のネイティヴの発音のらンデヴー を聞くと、カタカナをそのまま読んだ「ランデブー」と同じものだとは思えないほどです。
フランス語では、「約束」という意味です。
ランデヴーと聞くと、なんだか色気のある言葉で、「デート」を想像する方もいるのでは?歌謡曲の歌詞に使われた事が理由かと思われます。
フランスでは、ビジネスのアポイントのことや、待ち合わせ時間などを話すフレーズでもランデヴーが出てきます。
先生と会う約束がある。
J’ai un rendez-vous avec mon professeur.
ジェ アン らンデヴー アベック モン プろフェセーる
いかがでしたか?
フランス語と英語がなぜ似ているのか?とても深いテーマでした。
歴史の話など、少し難しい部分もありましたが、長い歴史を持つ、人類の財産である言語に、ますます興味が湧いてきませんか?
参考サイト:wikipediaより
単語集で、素敵な言葉にであいましょう!